World725

■ 甘々・ほのぼの系
02. キスとキスの合間に




 最近、俺おかしい…。

 視界に飛び込んでくるバルフレアの姿にドキドキと高鳴る胸を抑えて、俺は俯いた。




「どうした、ヴァン」

「あ、ごめん…!」



 前方から飛んできたバッシュの声に慌てて剣を抜くと、急いで駆け出して正面にいるモンスターに切りかかった。



 今日は、資金調達のため男3人で狩りをしていた。女性陣は、アイテムの買出しと夕飯の準備。
 たいして敵の強くないエリアで、どんどん敵を倒していくいつもの方法。

 リズム良く倒して行けば、どんどんアイテムを落としてく。
 けれど…




「ヴァン、疲れたなら休憩するか?」



 再びバッシュに声をかけられてしまった。背中に、バルフレアの刺さるような視線も感じる。




「ごめんっ・・・大丈夫だから!」




 俺は慌ててバッシュの横に駆け出すと、背後からそれを制する声が聞こえた。




「ヴァン、調子悪いならやめとけ」

「平気だって!」



 視線を合わせることも出来ず、俺は2人を振り切るように先陣を切って敵に突っ込んでいった。





「おい、ヴァン!!」







***






「言わんこっちゃない」




 結局俺は・・・皆の足止めをさせることになった。

 2人の制止を振り切って無謀にも敵陣に飛び込んだら、案の定袋叩きにされて瀕死の怪我を負ってしまった。

 安全な場所へ退避して、俺は小さくなって俯いてた。




「いったぁ・・・」

「ったく、これぐらい我慢しろ」



 バッシュが俺のために、町に戻るためにチョコボを取りに言ってくれてるところで。
 バルフレアが俺のキズの治療と回復をしてくれていた。


 最初は申し訳なさと格好悪さで小さくなっていたけど・・・
 やっぱり、バルフレアが視界に入ってくるとどんどんドキドキが戻ってくる。

 俺本当どうしちゃったんだろう・・・?




「も、もう平気だから。ありがとう、バルフレア」




 それ以上、バルフレアの傍にいるのが耐えられなくて俺は急いで立ち上がった。
 けれど、それを阻むようにぐいっとバルフレアに腕を引かれる。




「わぁっ!」

「待てよ、ヴァン」



 そのまま体制を崩して、俺はバルフレアの腕の中にすっぽりおさまってしまった。




「わ、ごめん!ちょっと・・・」

「何慌ててんだよ」



 耳元で意地悪なバルフレアの声が響いた。俺はますます動揺して、意味不明な言葉を並べる。
 すると、バルフレアが低く笑って身体を揺らしているのが分かった。


 なんだか、その声に惹かれるように俺はそっと顔を上げる。
 するとそこには、いつもの意地悪そうな笑いを浮かべたバルフレアの顔があって・・・俺は、それから目を離せなくなった。



「あ・・・」



 急にバルフレアがマジな顔をして、その顔が俺に近づいてきて・・・
 その唇は、俺の唇に重ねられた。

 驚いて身を固くさせると、緊張を解きほぐすかのように優しく身体を引き寄せて、バルフレアはもっと口付けを深めて来た。




「ふっ・・・んん・・・」




 頭がぼうっとして、まるで意識に靄がかかったようになった。
 どうして、バルフレアはこんなこと・・・とか思うけれど、どんな疑問も流されていく。

 ふと、急に唇が離された。




「ヴァン、どうして俺を避ける?」

「え・・・避けてなんか・・・」



 バルフレアの問いかけに戸惑って俺は、その瞳から逃れるように視線を落とした。
 けれど、それを許さないとばかりにバルフレアは顎を捉えて強引に視線を合わせる。



「言わないなら・・・言わせるまでだ」



 そういうと、再びバルフレアは俺にキスをした。
 唇の隙間から入り込んだバルフレアの熱い舌が、さっきよりずっと俺の深くに入り込んできた。
 俺の舌を絡めとリ、甘く吸い上げ噛まれると・・・身体からどんどん力が抜けて、どうにかなってしまいそうな不安に駆られた。




「ぁあっ・・・まって・・・」

「待てないな」

「いうっ・・・んっ・・・」



 唇は離される事はなくて、俺は何とか強引に言葉をつむぎだした。




「バル見てると・・・んっ・・・俺・・・・」

「俺が?」

「変なんだ・・・・ぁあっ・・・ドキドキしちゃって・・・」




 突然唇が遠ざかっていく。
 俺は、ぼうっとした頭で必死にバルフレアの表情を探った。


−−−変に思われたかな


 バルフレアは真剣な表情で俺を見つめた後・・・また、あの意地悪な笑みを浮かべた。




「ガキのくせに、そこまで言えれば・・・まぁ今のところは合格か」

「え・・・なに?」

「こっちの話さ」



 そういうと、バルフレは優しく俺を抱しめた。
 胸がドキドキするのは変わらなかったけれど・・・胸のドキドキをバルフレアに告白したことで少しだけそれが収まったのが分かった。

 俺の話を聞いて、バルフレアが笑ってくれたのが嬉しい。
 抱しめてくれたのが嬉しい。





 そろそろバッシュが帰ってくる。
 俺が、バルフレアからそっと身を離すとバルフレアがぽんぽんっと頭を撫でてくれた。

 また、胸のドキドキが再開する。
 それと・・・胸の奥に今度は暖かい何かが生まれるようになった。


 まだ、今の俺には得たいの知れないそれ。


 それが何を意味するのか、俺がそれを理解して、それをバルフレアに伝えることができるようになるのは・・・もうちょっと先の話だけど。 




END





アトガキ
まさにキスとキスの間の・・・告白のイメージで書いてみました。
まだこれからって感じのバルヴァンです。





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