未来への光(ED後模造)
第三話『ニ筋の光』
俺は、ジェイドの私室を後にして、再び始まる長い旅の準備を始めていた。
といっても、ローレライの言葉以外・・・しいていうなら、自分の直感くらいしか手がかりは無いし。
まさに、手探り状態だった。
「とりあえず、情報収集だな」
返事があるわけないのに、俺は一人でつぶやく。
旅の終わりまでウザイウザイと虐げてきた、ミュウの存在が無性に懐かしくなる。
「あいつ元気にしてるかな」
ふと俺は、1年前に終わりを告げた日々を思い返していた。
過去にすがるなんて前向きじゃない、って思うけど・・・
「おーい!ルーク!!」
「ガイ!!」
「何度も呼んでるのに、行っちまうからさ!」
少し肩で息をしながら、俺の肩を掴んだ。
「ったく、水臭いじゃないか。俺に何の相談も報告も無く、旅に出ようなんて。」
「ガイ・・・ごめん・・」
ジェイドも水臭い。
口が軽いわけじゃないジェイドのことだから、きっとガイにわざとらしく俺のことをほのめかしたんだろう。
なんだか、そんな気遣いすら嬉しくて俺は喜びを噛み締めた。
「ガイ、お前はピオニー陛下のぶうさぎお世話係りになったんだろう?サボってていいのか?」
「いや、これも用事の一端なのさ。お前を陛下のところへお連れするっていう役目さ」
そういうと、ガイは着いて来いといつものウィンクを俺に投げて、ピオニー陛下の元へ向かった。
ピオニー陛下。
かつて旅の途中に訪れた時に、俺は苦手だとみんなに告白した。
その理由をジェイドは、自信に満ちた態度が自分に足りないからだって言っていた。
今、ピオニー陛下に会ったら少しは印象が違うんだろうか。
そんな不安を胸に、ガイの後を追った。
***
「ガイ様、お帰りなさいませ。」
「ルークを連れて来たとピオニー陛下へ伝えてくれないか?」
「かしこまりました。」
城門を守る兵士に迎えられ、ガイは奥へ続く通路へ俺を案内した。
ガイはやぱり貴族の出だ。なんだか見慣れはしないが、やはりこれが本来ある姿なのだろう。
思えば、使用人としてかなりこき使い無茶を言ってきた。 全てはガイの人柄ゆえに・・・それに甘えていたんだと思う。だからといって、許されることじゃない。
何だか今更申し訳ない。
「何くらい顔してるんだ?、ルーク」
「ガイ・・・ごめん、俺・・」
「余計な事を考えるのはよせよ。俺たちが過ごした時間は迷ったりして間違ったりして育ててきたものだろう?」
そう言ってくれるとうぬぼれていたわけじゃないけど、ガイはそういうやつだったんだ。
俺が変な気を回しても喜ばない。 こんな親友を持って、他に何を望むって言うんだろう。
「ありがとな・・・ガイ」
「いいってことさ!さぁ、ここだ」
ドアをあけると、そこにはぶうさぎとくつろぐピオニー陛下が俺を待っていた。
もちろん、その横には足元にまとわりつくぶうさぎに顔をしかめるジェイドがいた。
「おぉ、ルーク。良く来たな。ジェイドにはいじめられていないか?」
「ピオニー陛下、ご無沙汰しています。」
「人聞きの悪い挨拶をしないでください」
心なしかぶうさぎの和が増えたような気がしなくもないケド・・・
などと思いながら、陛下と挨拶を交わした。
「話は、ジェイドから聞いた。単刀直入に聞くか、『ローレラインの意思』があるというが、明確に果たすべき事柄は分からないんだな?」
「はい。俺がタタル渓谷で目覚める時に聞こえた声はすでに、曖昧でした。」
「ふむ、そうか・・・。」
ピオニー陛下は、腕組みすると少し考え込んでいた。
「ピオニー陛下、いやらしいですねぇ。早くルークに手の内の情報を与えてあげたらどうです?」
そう言うとジェイドは、ガイへ合図をした。
「なんだ?」
まったく3人のやり取りに検討がつかず、戸惑っているとガイが隣の部屋へ続くドアを開けた。
「さぁおいで」
「みゅぅみゅみゅ〜!
ご主人様ですの〜! 会いたかったですの〜!!」
「おわわわわわ」
開いたドアから、突然みゅうが飛び出してきて顔面に飛びついてきた。
「うわっぷ、苦しい!落ち着けブタザ・・じゃない、ミュウ!」
「ご主人様、ブタザルって呼ばないですの?ミュウは、ご主人様がつけてくれた名前が嬉しいですの〜・・・」
そういうと、みゅうは耳を垂れ小さくなって落ち込んでいく。
「いや、そうじゃなくて・・」
「まぁまぁ、感動の再開はここまでとして、ミュウには大事な役目があってここまで来ていただいているんです。」
「大事な役目?」
「はい。」
一呼吸おいて、ジェイドはミュウに言った。
「さぁ、みゅう。先ほど私たちにお話してくれた内容を、ルークにも説明さしあげていただけますか?」
「はい、ですの」
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