World725




初夏様へ
16000hitキリリク小説
『23. 悪意無きイタズラ』(クラ)



※触手ネタになります。
 苦手な方は、ご注意ください。




 もうどれくらい進んだだろう。

 クラウドは、疲労を訴える身体をその場に横たえた。
 見上げると、木々の隙間から月明かりが差していた。




 今日は、本当は訓練は休みで部屋でゆっくり休むための日だった。
 けれど、クラウドは先日の訓練とその効果演習で思うような実力を出せなかった。

 それが心残りで、部屋を抜け出してここへ来た。




 この森は今のクラウドにとってやや格下のモンスターしか居ない。
 けれど、数はそれなりにいる。

 だから、修得した技を確実にこなし訓練するためには最適な場所だった。




 部屋を出たのは昼を過ぎた頃だったから、かなりの時間が経っていることは確かだ。
 今日は、ザックスにもセフィロスにも連絡をしないで部屋を飛び出してしまった。

 そろそろ、部屋に戻ろうと身を起こした。





「水の音…?」




 帰り道へつこうとすると、そんなに離れていない何処からか水のせせらぎの音が聞こえた。

 傍に小川や泉があった記憶は無い。

 しかし、長時間身体を動かしつづけ汗をかき汚れた衣服を思うと、その水音に惹かれた。



 少しくらい汗を流してもいい、と思いクラウドはその音のするほうへと足と踏み出した。






「…?」 




 おかしい。
 何か不可思議な様子に、クラウドは首をひねった。

 音のするほうへ、何歩足を踏み出そうともそこへ近づく気配がない。
 水音は変わらず響き渡るのに、どれだけ進んでも小川や泉の気配があわられる様子がなかった。


 ふと、周囲を見渡すと森がざわめいた。




「…何だ…?」




 見上げても、すでに深い木々に覆われて月明かりが見えない。
 路を覆い隠すように立ちはだかる木々が大きく揺れる。






「うぁっ…!」





 クラウドの身体が背後から何者かに押さえつけられた。

 突如の出来事で、クラウドは反応することができず地面に叩きつけられる。




「何だっ…」




 背後から遅いくる激痛に耐えながらも、背後の存在を確認するため身を捩った。

 そこに在る者に驚いて、クラウドは眼を見張った。


 それは、しいて言うのであれば大きな大木。
 しかし、大木にはあり得ない姿だった。


 紫色の大木のようなモンスターは、木の肌とは異なりぶよぶよと柔らかい皮で覆われていた。
 そこから伸びる枝は、幹より薄い紫がかった桃色をしていて、いくつも枝分かれして無数に伸びていた。


 そのいくつかがクラウドを押さえつけていた。





「くそっ…!」




 見たことも無い気味悪いモンスターに戸惑いながらも、クラウドは何とかそこから逃れようと暴れだす。

 しかし、大木はそれを逃すまいと更に枝を伸ばしクラウドを捉えた。





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