柴犬様へ
21111hitキリリク小説
『07. 今も昔も遠い未来もすぐ側に』(セフィクラ)
「ね・・・出かけなくていいの・・・?」
ベッドに寄りかかるセフィロスに抱かれるように寄りかかり、クラウドは窓の外に視線を投げた。
高層階の窓の外には、暗い色の雲に覆われて降りしきる雨だけが見えた。
シーツだけを身にまとい、クラウドは少し肌寒さを感じてセフィロスにそっと抱きついた。
セフィロスは、クラウドの問いに答える様子はなく、なおも変わらず柔らかい金色の髪を梳いていた。
「もう・・・知らないよ?」
何も答えないセフィロスに拗ねたような声を出す。
そして、クラウドもセフィロスの銀色の髪を梳くって、同じように梳きはじめた。
再び、部屋に沈黙が落ちる。
厚い窓に閉ざされて、激しく降りしきる雨の音も聞こえない。
さらりさらりと、セフィロスの髪がこぼれた。
「俺さ・・・」
変わらず髪を撫でるセフィロスの指の動きを、心地よく感じながらクラウドはまたおもむろに口を開いた。
「セフィとこんな風になんて・・・想像もしなかったよ」
「・・・なんだ、急に改まって。」
少し驚いたような声が、頭上から降ってきた。
その様子に、クラウドは面白そうにくすくすと笑った。
こんな風にセフィロスと、親しい口を聞けるようになったのはまだ最近の話。
クラウドが、セフィロスと想いを通じてからもなかなか思うように振舞えず・・・すれ違ったこともあった。
その時まで憧れの英雄だったのだから・・・当然と言えば当然だったのだけれど。
「きっと、俺がザックスと仲良くならなければアナタは俺のことを知ることなんてきっと無かったんだよね」
「何をくだらんことを。」
「そう思うと・・・何だか切ないね」
そんな可能性があったことを思うと、セフィロスが失われてしまうことを恐れる恐怖心に似た感情がわきあがる。
クラウドは怯えたように、セフィロスにぎゅっとしがみついた。
そんなクラウドを見て、セフィロスは優しく微笑むと力強く抱きしめてやる。
「いずれ、お前と出会い・・・こうなっていたさ」
「そう・・・かな」
「ああ」
ザックスから、クラウドの話は聞いていた。
確かに、それが2人の出会いのきっかけになったけれども。
その前から、クラウドを知っていたことは誰も知らない。
普段なら目を留めることない一般兵の訓練場の横を通り過ぎるとき、視界に飛び込んできた金色。
射抜くような青い瞳の色と、瞳の力強さと間逆の儚さを漂わせた白い肌と細い腕。
しかし、そこから繰り出される技術は荒削りではあるけれど何かを感じさせるものだった。
「ねぇ、セフィロス」
「なんだ」
初めて出会った頃のことに思いをはせていたセフィロスが、クラウドの声に現実に引き戻される。
クラウドは変わらず胸に顔を埋めたまま。
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