アイリ様へ
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切なめなセフィクラ
『32. 遠い日々に居た人』(セフィクラ)
見上げれば冬の澄んだ空に、満点の星空が広がっていた。
手を伸ばせば届きそうなほど近く見えて、夜空に吸い込まれそうな錯覚に戸惑ってそっと瞳を閉じた。
「クラウド・・・そろそろ飛空挺に戻れ」
背後から声がして振り返ると、シドが呆れたような顔をして、飛空挺の扉から顔を出していた。
「今日も冷える・・・いい加減にしとけよ」
こうして冬の空の下、星を眺めるのはクラウドの日課だった。
そして、シドやヴィンセントが心配そうに、時には呆れて船内へ呼び戻すのも日課になっていた。
「ああ・・・」
いつもなら、呼ばれてすぐ飛空挺に戻るクラウドだったけれど・・・今日はもう少し夜空の下に居たくて再び夜空を見上げた。
背後からため息が聞こえて、飛空挺の扉の閉まる音が聞こえた。
静けさを取り戻した甲板の上で、冷たい冬の風が吹き抜ける音だけが響いた。
『・・・クラウド、こんなに冷たくなっている』
聞こえるはずの無い声に、はっと夜空を見上げる。
『クラウド・・・』
***
「・・・クラウド、こんなに冷たくなっている」
ふわりと肩にかけられたジャケットが、セフィロスのぬくもりを持っていて嬉しくなった。
クラウドは、振り返って愛しいその人を見上げた。
「なんだか、嬉しくて眠れなくて・・・」
「嬉しい・・・か」
「バカみたいだろ」
今日は、初めて神羅の兵士となっての任務を終えて、貰った休みの日だった。
まだ一般兵の身分で、大きな任務へ呼ばれることも大抜擢だったし、そこでクラウドは業績を称えられてもらった休みも非常に名誉なこと。
その話を聞きつけたセフィロスが、強引にザックスを説き伏せ休みを得て、クラウドを連れ出していた。
それは、クラウドとセフィロスが恋人になってから、初めての旅行という形になった。
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