望月様へ
50000hitキリリク小説
『与え愛う』(SC)
その日は、いつもと様子が異なっていて・・・セフィロスは無表情の中に、虚しさという感情を浮かべていた。
それを見分けることが出来るのは、恋人である自分の特技とも言えるし、恋人の特権であるとも言える。
しかし、それと共にどうしてあげたらいいか、と毎度頭を悩ませ心を痛めるのも常だった。
「1人にしてくれないか・・・」
長期の任務から戻るなり、クラウドに一瞥くれるとセフィロスは、一言告げると自室へと消えた。
しつこく声を駆けるのも躊躇われ、クラウドは閉じてしまった扉を暫く見つめていた。
何があった?
大丈夫?
元気だして
なんていう言葉は、セフィロスには無用だ。
なぜなら、「何があった?」では済まされない重大な任務をその背に背負わされているのだ。
神羅の英雄という肩書きは生半可なものでできているわけではなかった。
憧れの英雄として、その姿を遠くから見つめているときには知らなかった多くのこと。
奇跡にも近い、色んな事が自分とセフィロスを恋人として結び付けたけれど、それによって今まで見えなかった人間的で、非人間的なあらゆる表情を見ることになった。
英雄ではなく、セフィロスそれ自身という。
だから、大丈夫なわけなくて、けれど「元気出して」などという安易な言葉もかけることができない。
仕方なく扉から離れ、リビングのソファに身を沈めた。
任務で会えなかった時間が長すぎて、例え扉ごしでも良い。
少しでも傍にいたい。
そんな切ない想いが、クラウドの中にあふれ出していた。
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