依鈴様へ
6666hitキリリク小説
『誕生日をもう一度』(セフィクラ+ザックス))
随分前から考えていたことがあって…。
どこへ行こうとか、何を食べようとか、何をしようとか、何をあげようとか、何を言おうとか。
ただ喜ぶ顔が見たくて。
けれど、その日を待ち侘びていたのは俺だけだったみたいで…。
勢いよく開けたドアが物凄い音をたてたけど、クラウドは見向きもせず部屋へ向かった。
リビングにあるソファでひさびさの休日の午前を満喫していたザックスが驚いたように振り反った。
「あれ?クラウド、今日…」
「…何も言わないで」
手にはくしゃくしゃになった袋が握りしめられていた。
それは先週の休みにザックスが付き合わされた買い物で、クラウドが散々迷ってセフィロスのために買った物だ。
昨日の夜、クラウドは泊まりになるかもと言って、それをもって出掛けていったのだった。
そのクラウドが、今は何かを押し殺したような瞳で俯いている。
何となく事情を悟ったザックスは、ぽんぽんっと自分の隣を叩き座るように促した。
クラウドもそれに従い素直に座る。
見計らったように、ザックスが優しく言った。
「ダンナも今頃、残念に思ってるさ」
ふと、隣に目をやると肩を震わせるクラウド。
そんなに悲しんでいるのかと、哀れになり肩に手を乗せようとするとパシリと払い落とされた。
手に握られた袋が氷ついて行く。
「昨日は遅くならないって言うから…黙って待ってれば…連絡も無し」
「クラ…?」
まだ一般兵のはずのクラウドから発せられる、ソルジャーをも怯ませるオーラ。
部屋に置いてあるマテリアが反応して小さくブリザドが発動している…。
「…無頓着な性格は知ってたさ…けど…これじゃ無視と同じだ…」
「お、落ち着けクラウド…」
みるみる室温は下がり部屋がみしみし音をたて・・・空気が凍てつく。耐え切れず窓ガラスはひび割れ、部屋じゅうが霜で白くなってきた。
あれってブリザガまで行っちゃってたっけ…などとザックスは半ば諦めながら頭の隅で考えた。
「忙しいとか大変とか知ってる…けど…どうせ俺は一般兵で…あぁ、ソルジャーの事情なんて…分からないよ…」
「待て、誰もそんな…」
急に部屋の温度の急降下が止まる。
クラウドも押し黙る。
ザックスは恐る恐るクラウドを覗き見た。
「…クラ?」
「…ぅっく…ザッ…クスぅ…」
今度はクラウドの青い瞳から、大粒の涙が零れ出した。そして上目使いで見上げられる
…その気の無いザックスですらドキっとしてしまいそうになる。
「泣くなよ…」
「…ザックスぅ…」
俺が慰めてやるよ…ではないけれど。
そっとクラウドを抱き寄せてやると、それに甘えて自然にザックスの胸に顔を埋めた。
その可愛い仕種にぐっと来たザックスは、そっとクラウドの頭に手を添えると上を向かせた。
そして、目を閉じて涙を流すクラウドの瞼に唇を落とすと優しく涙を吸い取った。
「ん・・・」
驚いて身じろぐクラウドを抱き寄せると、思わず目の前に現れたクラウドの誘うような唇にそっと自分のを重ねた。
「・・・ふ・・・だめ、ザックス・・・」
弱弱しい力で、クラウドはザックスの身体を押しのけようとした。
しかし、せっかくのチャンスだし!・・・と思ったその瞬間。
「貴様、死にたいか…」
マサムネの刃先が視界に入る。
1mmでも動けば肩から叩き切られるだろう、そんな位置。
本能が、これは本気だと悟る。
「ま、待て…俺はただ…」
「言い訳無用…!」
マサムネが振り上げられる。それを制する声が上がった。
「セフィ!」
泣き掠れた声にセフィロスは、はっとしたようにクラウドを見つめる。
ザックスは神の声とばかりに、小さなクラウドの背後に隠れ命拾いできたことを感謝した。
しかし、その感謝もすぐ後に無かったことになる。
「帰ってよ・・・!」
「クラウド・・・なんだというんだ」
涙ながらにセフィロスを睨み付けながら叫ぶ。
その姿にセフィロスは、戸惑ったように立ち尽くした。
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