未来への光(ED後模造)
第四話『絆』
「逃げろ!また煙が噴出したぞ!」
「うぁ、溶ける・・・」
「しっかりしろ!」
地響きと共に揺れを感じたかと思うと、 辺りを覆いつくす煙のような物質が濃さを増した。
人々の身体にまとわりつくその物質は、まるで意思を持っているかのように次々と人々に襲い掛かる。
「来るぞ!」
「うわぁあぁああ」
***
「これは・・・」
「思ったより事態は深刻そうですね」
ジェイドが冷静にコメントする以外、皆はその衝撃的な状況に口を閉ざした。
閉ざしたというより、言葉がでなかった・・・が正解かもしれない。
ダアトには、ザレッホ火山方面から救出された人々が次々と運び込まれていた。
教会へ続くとおりには、体の一部分を失った人々が多く見受けられる。
「大佐〜〜!」
一行の思い沈黙を打ち破るように、元気な呼び声がした。
「アニス〜。やはり貴方は無事でしたか。」
「ぶぅ〜、心配しに来てくれたんじゃないですかぁ」
大佐の意地悪〜などと言いながら、唇を尖らせ拗ねるそぶりを見せた。
別れた頃と変わらない無邪気な姿に、一同緊張に固まった表情に笑みがこぼれた。
「さて、アニス。状況を報告していただけますか?」
「はーい、大佐」
アニスの話によれば、各地から集まった偵察団や護衛の兵士達が主に被害にあっているという。
出元は不明だが、ザレッホ火山内部からその物質はあふれ出しているらしかった。
「それで、その物質に触れると体が溶けちゃうんですよ!」
「溶けるというよりは、音素が乖離すると言うほうが正しいかもしれないわ」
アニスの説明をフォローするように声がする。声のする方を振り返ると、見覚えのある懐かしい顔がそこにあった。
「ティア!」
「ルーク、元気そうね。のんびり再開を喜べるような状況じゃないのが残念だけど・・」
ティアは、年月の分だけ大人の女性に変身していた。それに、元々冷静沈着な彼女だったが少しそこに柔らかさも加わったみたいだった。
すかさず、ティアの言葉からジェイドが疑問を口にした。
「あの症状は、音素乖離なのですか?」
「はい、大佐。救援要請でユリアシティからも数名調査隊が派遣されています。」
そう言いながら、1枚のカルテを見せた。ある患者のカルテのようだ。
「たしかに・・・。」
「ジェイド、何て書いてあるんだ?」
俺は横からカルテを盗み見たが、難しい文字や言葉だらけで解読できなかった。
やっぱり文字の勉強しておくべきだった・・・。
「おや・・・。」
「なんだ?」
「いえ・・・。つまり、物質が触れた箇所のみが音素同士の結合を弱らせる効果があるようですね」
音素乖離。
それは自分自身の経験で良く分かっていた。
これが一度起きてしまえば食い止める方法はなく、ただおとなしくその時を待つしかない。
「ルーク・・・」
「・・・あ、ごめん。」
俺は慌てて笑顔を作った。
みんなが心痛な面持ちで俺を見ていた。
いけないいけない・・・過去を思い起こしていたばかりに表情に出てしまっていたのかもしれない。
ここでみんなに心配かけても仕方ないしな。
「とにかく、俺たちは状況を把握するために現場に行ってみるか」
ガイが告げた。
続いてアニスが言う。
「ダアトは、ピオニー陛下とナタリアのおかげで救援物資はまだまだ十分だしね!」
「ナタリアか」
「立場上ここに来れないからって。」
「なるほどな」
かつての戦いで、王女であるナタリアは戦地に赴くことで民を救ったけれど、たくさんの困難にも直面してしまった。
大事な父親との絆を裂かれそうになったり・・・
今彼女がすべきことは、国民を不安から守ることだろう。
「よし!ナタリアの分も含めていっちょがんばるか!」
俺は、気合をいれて叫んだ。
「ルークはやっぱそうじゃなきゃな!」
「ご主人様、かっこいいですの〜」
「しょうがないな〜、このアニスちゃんが(玉の輿もまだチャンスあるし)ルークに付き合ってあげるか」
「何〜!?」
俺たちは、この先で遭遇するだろう危機的状況を前に、心の底で静かに覚悟を決めた。
そして、きっとローレライの解放したときの仲間との絆を再確認していた。
続く
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