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『傷つけてなお』
(セフィクラ+ザックス)
炎天下の中、俺は今日も特別実地訓練に挑んでいた。
激しく照りつける太陽が、夏がそろそろ終わる時期であることなど否定しているようだった。
少し視線を上げて周囲を見渡すと、そこに見慣れた黒髪が見えた。
ザックス。
俺の同室であって、先輩であって、親友であって・・・今は現場監督。
今日は、特別実地訓練だったからソルジャーが指導にあたっていた。
俺は、一般兵でまだまだソルジャーには程遠い。
いつかソルジャーに・・・とは、思うけれど。
ふと、視界の横で不自然な動きが見えた。
「あ・・・」
この灼熱の実地で、同じ訓練チームだった1人の兵士がその暑さのせいかふらりと揺らいだところだった。
そこに、訓練用モンスターとはいえ、それらの攻撃のターゲットがそちらに向いたのが分かった。
「危ないっ・・・!」
無意識に、俺はそいつを突き飛ばした。それと同時に、背後にとてつもない痛みが走った。
「ぐっ・・・!」
肩から背中にかけて、大きく皮膚が裂かれたのが分かった。
しかし、なんとか左肩を庇い右で剣を構える。
大きく引くと、モンスター達をなぎ払うように横から叩きおろした。
グアァアアアア・・・・!
振り回した剣に真っ二つにされるように、モンスター達が倒れた。
「・・・っ・・・はぁ・・・」
「クラウド!!」
異変に気づいたザックスが駆けつける気配がした。
そちらに視線を向けたくとも、急激に視界が暗くなるのが分かる。
負傷したまま攻撃をしかけたせいで、出血がひどくなったのかもしれない。
大丈夫・・・と、いう言葉が発せられたかどうか判断することもできないまま、俺の意識は闇に溶けた。
***
「お前は、無茶するからなぁ〜。気が気じゃないな。」
「もう、あの時のことは良いだろう・・・反省した」
訓練の怪我が思ったより長引いて、俺は1週間もベッドの上で過ごすことになった。
間接や筋などを痛め少し長引いたが、駆けつけたザックスのケアルのお陰で表面的な傷はかなり綺麗に治った。
無茶に庇いに走る行為は、兵士としては褒められたものとも言いがたい。
と、散々お説教されたが・・・。
「来週から訓練戻れるんだろ?」
「うん、もういいだろうって」
「そうか・・・お世話の生活も終わりだな」
「うん、ありがとう・・・ザックス」
同部屋ということもあって、入院中ザックスは毎日俺の身の回りの世話をしに来てくれていた。
ザックスは、本当に優しい友達だと思う。
俺がソルジャーに志願して兵士になったときから今日まで、何かと人付き合いの苦手な俺を手取り足取り支えてくれた。
本当ならソルジャーがそこまでしてくれるなんて・・・ありえないことだと思う。
きっとそれはザックスだから。
「そういえば、セフィロスが任地から帰ってる筈だぜ」
「知らせあった?」
「ああ、今朝入ってたぜ。そろそろ、入院の話を聞きつけてここに駆けつけてくるころだと思うけどな〜」
セフィロス・・・英雄セフィロス。
ソルジャーで知らない人はいないと思う、ソルジャー1st。
もしかしたら、ソルジャーに志願するものの殆どがセフィロスに憧れて志願してると言っても過言ではないかもしれない。
そういう存在。
そして・・・俺の恋人。
「じゃ、俺また戻るから。」
「あ、ありがとう。また、部屋で」
「ああ、またなー」
そろそろ面会時間も終わり。
今日は入院最後で、ザックスに世話してもらう日々も最後だ。
ザックスが居なくなると、また個室に取り残された俺は窓から見える外の景色を眺めながら孤独感に囚われた。
ふと、ザックスの話を思い出す。
セフィロスが戻っている・・・。
特別実地訓練の前から、長期の任務で離れ離れだった。
出かけ際に、散々実地訓練には気をつけろと口をすっぱくして言われたのを覚えている。
普段は、完璧な英雄セフィロスだけれど・・・俺と居るときは1人の恋する男の顔を見せる。
そんなセフィロスが無性に愛しかった。
−−−会いたい・・・
はっと、視線を上げると先ほどザックスの出て行った扉に見覚えのある人影があった。
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