『繋いだ手が離れても』
第一話
その『お宝』の情報をいち早く手に入れられたのは、トマジのお陰だった。
俺は、再び自分の飛空挺を手に入れてパンネロやカイツ、フィロ、トマジと空を旅していた。
もちろんリュドやクーシーも。
フォルノサスを倒し、心を取り戻したエグル達。
そんな彼らがリュドのお陰で新しい土地を手に入れ平和が訪れた証拠だった。
でも、平和な日々は長く続かなくって・・・。
俺は、驚きと不安に溢れた声色でトマジに尋ねた。
「それ、本当か?」
「トマジ様の情報を疑うのか?・・・て、まぁ疑いたい気持ちも分かるけどな」
そういうと、トマジは、飛空挺に備えられた掲示板に手に入れた情報を纏めて書き記していく。
「依頼者は不明、バルフレアさんの首に懸賞金・・・っとここまでは驚くような内容じゃない」
「うん・・・」
「ただし、だ。懸賞金が半端無い額のせいで、かなりの奴等が徒党を組んでるらしい。」
「相手はほぼ全員がグルってことか?」
「だな」
俺の中は、急に不安に胸がどきどきした。居ても立っても居られない。正体不明の相手が、バルフレアの首に国家予算並みの賞金をかけてきた。
そんなお金があれば、相当の人間がグルになっても賞金を分けられる。
いくらバルフレアだって、そんな大勢の人間を相手に無事でいられるのかな・・・?
ヴァンと同じ不安を察したように、パンネロも重たい口を開いた。
「いくら、バルフレアさんでも・・・フランと2人だけで行動しているし・・・」
「俺、とにかくバルフレアに会いに行ってみる」
「そうだな」
誰がこんな大金をバルフレアの首に掛けたのか、本当の目的とかまるっきり不明だったけど。なんだかすごく嫌な予感がした。
***
シュトラールの目撃情報があった王都ラバナスタへ降り立ち、俺たちはアーシェの元を訪れていた。
今、アーシェは王女で俺たちは空賊。
本当はこんな気安く尋ねて言い筈も、まして面会してくれることもありえないんだろうけど・・・
緊急事態!という訴えに、なんとかアーシェに会うことが出来た。
はやる気持ちも押さえられず、挨拶もそこそこに俺はバルフレアとシュトラールの行方について尋ねた。
「アーシェ、バルフレアの行方を聞いていないか?」
「彼が探している宝についての話は・・・少し聞いたわ。けれど・・・バルフレアはつい数日前にここを発ってしまったけれど。」
「バルフレアが追う宝って?今はどこにいるんだ?」
「ヴァン!」
いくらかつての旅の仲間と言っても、相手は一国の王女様。
動揺しているとはいえ、矢継ぎ早に質問を投げかける俺のあまりの無礼さにびっくりして・・・パンネロが慌てて大きな声を出した。
「あ・・・ごめん、アーシェ・・・。」
「パンネロ、いいのよ。もう慣れたし・・・」
「アーシェ・・・ありがとう。」
アーシェは、優しくパンネロに微笑むとヴァンに厳しい目を向けた。
それに・・・バルフレアに賭けられた異常な懸賞金の話についてヴァンから聞いていたので、その焦る気持ちも十分理解できた。
「ヴァン、バルフレアはエルトの里へ向かうと言っていたわ」
「エルトの里?」
「ええ、何か新しいお宝の情報を手に入れたけれど・・でも、それを手に入れるためにはヴィエラの力がいるそうよ」
「だから、エルトの里へ?」
「ええ、フランも心当たりがあると言っていたし・・・」
これは俺たちにはすごく朗報だった。
もし2人がエルトの里に着いていれば、無事の可能性が高い。
エルトの里は、普通の人間ではなかなかたどり着ける場所では無いから。
「ありがとう、アーシェ」
「いえ。・・・ヴァン、気をつけて。」
俺たちは、ラバナスタを後にしてエルトへ向かった。
アーシェは、2人が手を取り合い駆け出していく姿を懐かしい思いと共に祈るような気持ちで見送った。
−−−どうかバルフレアをお願いします・・・
***
俺たちは、テレポストーンでエルトの里へすぐ移動した。
「フラン!」
エルトの里に足を踏み入れるとすぐ、フランはそこに居た。
息を切らして駆け寄る俺とパンネロの姿に、とても驚いていた。
「どうしたの、ぼうやたち。随分慌てているのね」
「バルフレアは!?」
「あの・・・バルフレアさんは・・・?」
「あの人なら、そろそろ戻って来る頃よ」
フランがエルトの里の高台の方へ視線を送ると、丁度正面の階段からバルフレアが何やら手に持ち降りてくるところだった。
「バルフレア!」
とにかく、姿を見れた。それだけで、安心して俺はバルフレアに飛びついた。
「おい、ヴァン!熱烈歓迎は嬉しいがどうしたんだ、こんな所まで」
「だって、バルフレアが・・・」
「さては、俺たちの狙ってるお宝をまた横取りか?」
「ちがうよ!!」
ふざけて意地悪を言いながらも、バルフレアも俺をそっと引き寄せてくれる。
とにかく、俺はバルフレアと会うことが出来てほっと一息ついた。
「詳しい話は、シュトラールで聞きましょう」
「そうだな」
俺とパンネロは素直に2人に従い、ひさしぶりに4人でアンカーポイントまで移動し、シュトラールへ乗り込むことになった。
続く
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